オーステンパー(Austemper)

オーステンパーとは、ベイナイト組織を得るための等温焼入れ法です。
鉄-炭素系平衡状態図のオーステナイト領域にまで加熱した製品を300~500℃にまで冷却、等温保持し、ベイナイト変態を起こします。ベイナイト組織とは、通常の焼入れ焼戻し処理で得られる組織よりも延性、衝撃値などが向上し、靭性や耐久性に富んだ組織です。
処理する製品は小型部品が多く、バネやクリップ、スプリング等、ねばり強さが必要な製品に対し効果を発揮します。
加熱温度と焼入れ温度の差も小さいため歪みが少なく、焼き割れが無いなどの特徴があり、処理後は焼戻しの必要もありません。

オーステンパー(Austemper)の特長

オーステンパー炉で処理された製品は通常の焼入れとは異なり、ベイナイトといわれる組織に変態します。
ベイナイト組織とは、等温変態図のノーズとMs点の間の温度に一定時間保持することで得られる組織であり、 同程度の硬さを有するマルテンサイト組織と比較すると延性、靭性に優れ、衝撃値は2~3倍向上します。
一般的にクリップやバネなど、靭性が必要な製品に用いられています。

呼称として保持温度が350℃以上は上部ベイナイト、350℃以下は下部ベイナイトと呼び、上部ベイナイトはねばり強さ、下部ベイナイトは硬さが向上します。

 

S55C 処理前組織写真/S55C ベイナイト組織写真

等温変態曲線で示した マルテンサイト変態とベイナイト変態の違い

事例紹介

シートベルトバックル部品

自動車に取り付けられるシートベルトの金属部品。
製品の特性上ある程度の硬度を有し、衝撃を加えても破断しない性質でなければなりません。
オーステンパーは通常の焼入れ焼戻しよりも耐衝撃性が向上し、靭性に優れた製品となります

ホースバンド

ホースやチューブを挟んで固定するための部品です。
ばね性を生かした製品は数多くあり、書類を挟むクリップ等もそれに該当します。オーステンパーはねばり強さを与えるため、ばね性が求められる製品に対し効果を発揮し、ホースバンドのみならず、様々な製品に適用されています。