浸炭窒化(Carbonitriding)

浸炭窒化は鋼の表面に炭素と同時に窒素を浸透・拡散させ、表面硬化層を得る熱処理で、主に耐摩耗性が必要な摺動部品に用いられます。
浸炭窒化は、通常のガス浸炭雰囲気にNH₃ガスを添加し、NH₃から分解したN成分により浸炭に加えて窒化も同時に行われます。窒化により焼入性が向上するため、焼入れ性の悪い材料、例えばSPCC(冷間圧延鋼板)、S15C(低炭素鋼)などの非合金鋼の処理が可能になるり、比較的安価な材料を選定することが出来ます。

浸炭窒化(Carbonitriding)の特長

浸炭窒化処理では、炭素と同時に窒素を添加して処理されるため、鋼表面に炭化物に加えて硬い窒化物を形成させます。表面付近に形成された硬い組織によって高い耐摩耗性を得ることができるため、2つの部品同士が接触して運動するような摺動部品に用いられます。
また、通常のガス浸炭処理では、肌焼鋼であるSCr415やSCM420が用いられ、オーステナイト変態より高い950℃程まで温度を上げてから焼入する必要があります。浸炭窒化処理では、NH3ガスを同時に添加するため、分解したN成分によって窒化され焼入性が向上します。そのため、浸炭処理では使われない低炭素鋼などの非合金鋼の処理が可能となるため、安価な材料を用いることができます。さらに、浸炭処理よりも低い温度で熱処理できるため、変形や歪みが比較的少ないです。

浸炭窒化(Carbonitriding)の特長

SPHCの熱処理前の組織写真(左)
浸炭窒化後の組織写真(右)