近年、東研サーモテックでは「DLCコーティング」についてのご相談が急増しています。
ニーズの高まるDLC他、コーティング技術について担当者にお話を聞きました。


DLCのお問合せが特に増えているようですが、どのような背景があるのでしょう。

自動車業界における環境対策、そこに大きなニーズが生まれた。

北村: そもそもDLCというのは、実は20年くらい前からあったコーティング技術なんです。
当時はDLC=コストが高いというイメージが強く、その機能性もまだあまり知られていなかった。
しかし最近は環境問題意識の高まりとともに、特に自動車業界における排ガス規制対策や低燃費車、
ハイブリッドーカーなどの技術開発が盛んになっています。
その技術の中の一つとしてDLCが注目されてきていると思いますね。

道本:一度良い結果が出れば、次からは選択肢の中に入ってくる。
実際、DLCもそういうかたちでどんどん問合せが増えているんでしょうね。

DLCとは、そもそもどういう技術なのでしょうか。

北村:
DLCとは、熱処理同様、強度を高めるためにカーボン(炭素)を主成分とする薄い膜を
金属の表面にコーティングする技術のことで、耐摩耗性や摺動性などを向上させることができます。
他にチタン系・クロム系のコーティング方法もあります。

それぞれに液体潤滑なのか無潤滑なのか、耐摩耗なのか摺動なのか、といった適応性があり、
母材の種類や使用用途によってどのコーティングをするかを選択します。
DLCの場合は特に無潤滑・摺動性を求める処理に適していますが、他と比べて費用が高く技術的にも難しいんです。

その上、DLCの本格的な研究開発はまだ始ったばかりで発展途上にあります。
当社も最初はチタン系から始めてクロム系、カーボン系へと開発を広げてきたという経緯があり、
DLCはまだまだ可能性を秘めた技術と言えます。

様々なコーティング技術のなかで、なぜ今DLCが伸びているのでしょうか。

―時代のニーズに応えるDLC―

奥田:現時点でDLCが最も注目されているのは自動車業界で、
ハイブリッドカーや低燃費車などを開発する過程においてDLCを採用したいという例が増えています。
2006年の京都議定書の頃から特に増えてきましたから、時代の流れというのはやはり大きいでしょうね。
日本では既に燃費が良くて環境に優しい車が売れる傾向にありますが、
近い将来に環境意識の高まりが期待できる北米や中国、インドなどでは、これから本格的に需要が発生すると予測されます。
そうなると、さらなる市場拡大が期待できます。地球全体でみてもやはり環境重視の方向になってくるのは間違いない。
そういったことを踏まえるとDLCはこれからもっと伸びる技術と言えるでしょうね。

―ひとつひとつ、地道な努力が実を結ぶ―

北村:そういう時代の流れから生まれてくるお客様の要望に応えるため、我々も常に意識を高く持って取り組んでいます。
品質はもちろん、コストやスピードにおいてもそうです。例えば低燃費自動車の部品だと、わずか1%の燃費を向上させるためにも
大変な苦労がいる。単純に、「DLCをやりましょう」というのは通用しません。

総合的なコスト面も考慮しながら「どういう方法でDLCをやるのか」、という方法論を提案できないといけない訳ですから、
自動車メーカーさんや他の部品メーカーさんとプロジェクトチームという形で相互協力しながら開発を進めていきます。

試作と検証を何度も重ね、実現可能な結果をたたき出すまで、社内の開発期間だけでも相当かかります。
コーティングだけで飛躍的に性能を上げることはできないとしても、そういう地道な技術開発を続けてきた結果、
新しく採用される様々な技術の中で、DLCがなくてはならない技術のひとつである、
という地位を確立できたというのはおそらく間違いないでしょう。

東研サーモテックの技術開発力、その強みとは何でしょうか。

―「熱処理+コーティング」の一貫体制―

道本:私たちは熱処理もやっていますから、母材となる金属の特性を知っている。
今まで蓄積してきたデータをもとに、お客様の要望に対して最適な材料とコーティング方法を総合的に判断することができます。
「コーティングをすると性能が上がる」という認識はいろんなところで増えてきていますが、
「コーティングは高い」というイメージもいまだ根強い。
そこで私たちが試作段階でよくお伝えしているのは、素材も加工も高いものを選ぶのではなく、
素材の価格を下げてコーティングに力を入れてみませんか?という提案。
結果的にみると、そちらのほうが品質も上がってコストダウンできる事例が多いです。

北村:逆に、コーティングで膜をつけるだけでなく、熱処理の方法も変えてみませんか?
という提案をすることもあります。一貫して処理を行うことで中間コストの削減にもつながりますし、
「熱処理+コーティング」の能力をフルに発揮させることができます。
このように、お客様のニーズを多角的に捉え、提案できるというのが東研の強みだと思います。

奥田:そういった総合的提案ができるエンジニアが揃っている、というのも強みですね。

北村:これは、社内に人材育成システムが整っていたことが非常に大きいです。
今でこそ熱処理がどれだけ産業の発展を支えているか、というその重要性がわかりますが、
就職活動をしている段階で熱処理業界を目指す人なんてまずいないです。
だからこそ、入社した後の指導・教育が重要、という方針から、社内では勉強会や資格取得、海外研修など、
やる気を持てば様々な機会が与えられます。
教育内容は、部門内や自社業務内に限らず、幅広くなんでも習得できます。

道本:リーマンショックの時は、今まで忙しくてできなかった分チャンスだということで、
提案力を磨く研修をたくさん開いてもらいましたしね(笑)。

奥田:そういった環境があったからこそ、お客様のニーズにお応えしていけるのだと思います。
しかも、我々コーティング部門のメンバーは若手が多いんです。
メーカーさんと一緒に共同開発をやっていけるだけの能力のある若手メンバーが育っている、というのは、
将来的にもさらなる東研の強みになると思います。

―量産体制の確立―

北村:設備面で、量産体制が整っていることも強みです。
自動車部品などは同じ品質のものを量産しなくてはなりませんが、うちにはそれができる設備があります。
流れとしては、まず大阪のセラハード事業部でお客様からの要望をもとに試作を行い、
処理方法が確立すれば三重県の中部事業所で量産を行う。
この体制が、お客様に合わせた細やかでスピーディーな対応を可能にしています。

奥田:品質管理に対してもかなりシビアです。
ここまで厳しい条件のクリーンルームで検査をしているのは同業種のなかでは珍しいかもしれませんね。
重要な部品をたくさん扱いますから、ひとつとして不良品を出さないように、という想いでやっています。

―海外での需要にも対応可能―

北村:コーティングも現地でやってほしい―。
海外で部品を作っておられる日本の企業様からの、そういったご要望にも応えられるようになりました。
現在我々はタイ・マレーシア・中国に拠点を持っており、すべての拠点で熱処理とコーティングの体制を整えています。
これから海外出展をお考えの企業様にもご相談いただくことがあり、嬉しく感じています。

奥田:とはいえ、基本的な方針としてあくまでも拠点の中心は日本です。
日本でモノづくりを支えながら海外に発信していくというのが我々の考え方です。

DLCの課題とは何でしょうか。今後の取組みとは?

奥田:まず我々がすべきことはコストダウン。弊社のDLCは他社と比べると高いかもしれませんが、
スピーディーな開発や安定した技術など様々な付加価値を提供している点で、
総合的なコストパフォーマンスでは自信があります。しかしそれでもやはりDLCはまだまだ高い。

北村:コーティング処理自体は機械のボタンを押せば終わりですが、その前後の品質検査は人間がひとつずつやる必要があり、
どうしても人的コストがかかってしまいます。そこを今後どれだけ効率化していけるかが鍵となるでしょうね。
現在、社内では様々な取り組みが進行中。
コストダウンを図ることができれば、DLCはもっと様々な分野で可能性を発揮できるはずです。

奥田:DLCを皮切りにコーティング部門のさらなる発展を目指すということはもちろんですが、
コーティング部門で確立した品質管理体制や高度技術開発力を、熱処理分野にもどんどん波及していくことが必要です。
両分野が相互に刺激しあい、発展することで、どんなお客様からのどんなニーズにも応えていける。
企業としての挑戦はまだまだこれからも続きます。

最後に、PRできることがあればお願いします。

奥田:常に新しい技術開発が行われる産業界において、素材加工は欠かすことのできない技術といえます。
東研では、熱処理加工、及びDLCやPVDなどのコーティング加工でそれらの技術開発の一端を支えてきました。
しかし、高度経済成長期に確立された様々な加工技術は、今、新たな技術への過渡期にあるのかもしれません。
さらなるコストダウンや性能向上に素材加工が実現できる要素もあるかと思いますので、
そのような開発の際はぜひご相談ください。