DLC(Diamond Like Carbon)

DLCとは、ダイヤモンドライクカーボンの略称でトライボロジー特性に優れた硬質薄膜です。
カーボンを主成分としたダイヤモンドとグラファイトに対して、それぞれの特徴の中間的な特性を示す被膜です。
本ページでは結晶構造からダイヤモンドとグラファイトの特性を知り、DLCの特徴を考えたいと思います。

ダイヤモンド

ダイヤモンドは天然で最も硬い物質として、また、カット・研磨により美しい光を放つ宝石としても有名です。
ダイヤモンドの8面体構造はカーボンの同素体でsp3結合を有しています。均等で立体的な炭素結合は結合力が強く高い硬度70~150GPaを示します。一般的な鋼の5GPa程度と比較しても非常に硬いことが解ります。
また、自己潤滑性はなく、工業用途としてはダイヤモンドカッターの様に超硬合金やセラミックなど高硬度材料や難切削材料の研削に用いられています。

ダイヤモンド

ダイヤモンド構造(sp3結合)

グラファイト

黒鉛であるグラファイトは鉛筆の芯に用いられており、脆く黒い材料として知られています。
グラファイトの六角板状結晶(亀の甲状の層状物)はカーボンの同素体で積層状のsp2結合を有しています。層状間の結合は弱く脆いため硬さとしては評価できないほどです。
しかしながら、鉛筆の芯を粉砕して指上で転がすと良く滑る様に潤滑性は非常に高く、個体潤滑材としてオイルやグリースへ黒鉛粉末が用いられています。

グラファイト

グラファイト構造(sp2結合)

DLC(ダイヤモンドライクカーボン)

ダイヤモンドとグラファイトの中間特性を有するDLCは硬く良く滑る材料として工業用途に広く用いられています。
DLCはアモルファス(非晶質)構造を有しており、左図の様にsp2やsp3構造が混在し、ダイヤモンドやグラファイトの特徴を有しているため、通常は黒光沢色となるが極薄膜(おおよそ0.3μm以下)では一部光を透過し赤茶・青光沢など様々な顔を示します。

DLC(ダイヤモンドライクカーボン)

DLC構造(sp2-sp3混在結合)

DLCの大別

DLCはその成膜条件よりダイヤモンド構造に近く作ると硬くなり、グラファイト構造側にすると柔らかくなります。その他の特徴もDLC構造を調整する事で様々な選択が可能です。
DLCはその構造別に大きく4種類に大別しています。右図の通り、sp3構造の多さと水素の多さで特徴が大きく変化し区分することができます。
 (水素はDLCの成膜方法より膜内に存在する元素です)
その中でも特に水素が含有しているDLCをa-C:H、ほとんど入っていない物をta-Cと区分しています。使用用途や部品環境に応じて使い分けをしています。

使い分けの例としては、高圧・高速摺動部品で相手を攻撃せず耐デポ用途には水素含有DLCであるa-C:Hを採用します。アルミ材の切削など高硬度で耐溶着用途であれば水素フリーDLCであるta-Cを採用する等となります。また、一部エンジンオイルの種類になど部品環境に応じても使い分けを行います。最大の特徴区分は硬度で水素含有15~50GPaであるのに対し水素フリー30~90GPa程度と非常に硬い事が挙げられます。

DLCの大別

DLC構造の区分け

DLC膜の特徴◎
高硬度        ダイヤモンドの様に非常に硬い
低摩擦係数      グラファイトの様に良く滑る
低相手攻撃性     平滑で均一で低μ
耐デポ(化学的不活性)  平滑で均一で低μ
生体適合性      炭素主体の環境に優しい
耐食性        炭素主体で錆び難い
etc...

東研サーモテックのDLC

弊社のDLC膜は水素含有DLCであるa-C:Hを主体としたS-DLCと、a-C:Hに一部金属元素を添加したa-C:HWであるMe-DLCを標準として提供致しております。しかしながら、DLC膜は上述特徴の通り様々な用途の製品に対して、それぞれに応じた特徴を選定する事が非常に大切となります。私たちは水素含有/水素フリーおよび、その他ユニークな特徴を有するDLC膜を市場に提供致しておりますので様々なご要望をぜひご相談下さい。

東研サーモテックのDLC