Me-DLC(Metal inculuded DLC)

Me-DLCとは、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)に金属成分を添加して特性を改善したコーティング皮膜です。
弊社では主として添加金属にWC(タングステンカーバイト)を採用しています。高硬度で優れた耐摩耗性と低い摩擦係数(低μ)を特徴とするトライボコーティング膜(トライボロジー特性に優れた硬質薄膜)であるDLC膜に、金属添加による相手攻撃性を緩和させた応用膜のa-C:HW膜がMe-DLCコーティングです。

Me-DLC膜は、優れた膜密着性と低い相手攻撃性、潤滑剤環境下での耐摩耗・低摩擦係数を有しています。
また、残留圧縮応力が低いため高い面圧がかかる歯車や軸受、燃料噴射ポンプ、機械要素部品への応用が可能となるばかりでなく、母材表面粗さへの要求が低減され、飛躍的にDLCコーティングの応用分野を広げる事ができます。

Me-DLC(Metal inculuded DLC)の特長

DLCの最大の特徴である硬さ15~50GPa(水素含有DLC)は高硬度になるほど残留圧縮応力も大きくなります。母材の弾塑性変形に伴って界面に働く応力が密着力を上回って剥離(膜剝れ)を生じ易い傾向にあります。そのため、硬い膜では単層最大膜厚も2μm以下程度に制限されてしまいます。また、母材表面粗さが大きいと粗さ突起部で界面に働く応力が大きくなるなど、その製品形状・使用用途に応じて制限が課せられます。こうした残留圧縮応力に対して金属成分を一部添加し応力を緩和(膜硬さ10GPa程度に)する事で欠点を克服するMe-DLC膜は、比較的厚い膜厚を容易に形成する事ができ、様々な母材形状に追従した硬質膜を提供することができます。

Me-DLC(Metal inculuded DLC)の特長

Me-DLCを施した金属表面上のHRC圧痕(塑性変形)にて、膜の脱落が無く優れた密着性を示している。 (外部資料:VDI-3198参照)

ラインナップ

◆Me-DLC 硬度10GPa程度

【ご相談下さい!】

※ダイヤモンド構造に近づける事で8~18GPa程度(もしくはそれ以上)の硬度調整が可能。
 ご使用になられる部品環境に応じて弊社独自の加速耐久試験より最適な Me-DLC膜を提案致します。

Me-DLCのメタル含有量やDLCの構成をダイヤモンド側へチューニングする事で硬度・特性調整が可能。

事例紹介

ギア(遊星歯車)

金属部品であるギアボックス格納壁内やメインギアとの摩擦摺動に対して、相手攻撃性が低く高い摺動特性を有するMe-DLCが採用されています。
また、複雑形状へのコーティング形成を得意としているMe-DLC膜は、ギアや歯車などの凹凸形状差が大きくコーティングが施し難い部品へも幅広く用いられています。

シャフト

近年の静寂性が向上した社内環境を実現する一つの技術としてMe-DLC膜を施した部品が採用されています。
従来技術である金属部品同士の摺動では、前輪と後輪の動力を伝えるジョイントシャフト内の部品がかじり、乗り手に軽いショック感を与えてしまう事象も確認されています。
潤滑剤中での優れた摩擦係数を有するMe-DLC膜を施す事で、駆動トラクションショックを防ぎ、乗り手に安心と安全をもたらしています。